こんにちは!
みらいマーケティング本舗・代表の堀野です。
皆さんは、明確な数値目標を持って仕事に取り組んでいますか?
皆さんは、明確な数値目標を持って仕事に取り組んでいますか?
うちの部署には目標設定なんてない。
クライアントに具体的な目標がないけどどうすれば?
目標設定が大事だということは何となくわかっているけれど、目標設定が無ければ何が問題?
こんな疑問やお悩みをお持ちの方に、これまで20年以上、マーケティングの現場で目標設定を設定してプロジェクトを進行してきた経験を持つ堀野が、自身の経験に基づいて目標設定の役割や目標設定の作り方について解説をさせていただきます。
この記事を書いた人
堀野正樹(ほりのまさき)丨みらいマーケティング本舗代表丨独立前は、事業会社のマーケティングの責任者として70億円のEC事業を牽引。現在はECコンサルタントとして企業のECサイトの売上アップをご支援しつつ、自身のサイトを運営。Webマーケティングの情報をSNSで初心者向けに発信 しています。
Twitter: @horino_ec丨プロフィール紹介はこちら丨サービス紹介はこちら
目標がない組織にありがちな状況
これまでいくつかの企業のマーケティング現場を見てきたなかで、数値目標も持たずに事業を推進しているケースを目にしてきました。
では、目標設定がないと一体どのような問題があるのでしょうか?
いきあたりばったり、一喜一憂する
目標がないということは施策をやりっぱなしで検証をすることができません。
つまり「いきあたりばったり」ということです。少し反応がよければ「成功だ!」、逆に数値が悪化すれば「失敗した!」と大騒ぎです。
効果検証を行わないということは、何が良かったのか、悪かったのかという要因もわかりませんので博打のようにやってみないと分からないという状態になってしまいます。
思いつきで決めようとする
目標設定がない組織というのは、数値やロジックに頼らず根性や勢いで乗り切ろうとしがちです。
何かの意思決定を行うときも当然根拠なんてありません。担当者の思いつきや社長の鶴の一声で決まってしまいます。
思いつきでやると決まったものの、メンバーの中には「え?本当にそれやるの?」といった懐疑的な声もあり、チーム一丸で進めるという空気にはとてもなりません。
評価基準があいまい
目標設定が無いということは、基準となる指標が無いという訳ですから、施策の評価だけでなく、担当者の評価についてもあいまいになりがちです。
頑張ったんだからもっと評価して欲しいという気持ちもわからなくはないですが、会社というのは営利目的で運営していますので、自分がどれだけ貢献できたのかを説明できないと高評価を得ることは難しいですよね。
何をすればいいのかわからない
ゴールが曖昧ということは、現状とのギャップも正しく把握ができません。ゴールまであと少しなのか、全然足りていないのか、これも個人の感覚頼みです。
つまり、足りない分を埋めるために何をすればいいのかが見えてこないため、とりあえずできることからやってみようとなりがちです。当然、そこに優先順位なんてありません。
いかがでしょうか?
聞くだけでも悲惨な状況ですが、これが実際に私が携わった際に起こっていた事実なのです。
目標設定がないと、まともにビジネスを行うことすら困難になってしまいますので、懸命なコラム読者さんはぜひ自分が関わるビジネスの目標設定を意識してみてくださいね。
目標設定の立て方
目標設定が大切なのはわかった。ではどうやって作ればいいのか教えて欲しい。
当然そう思われますよね。次は目標設定の立て方についてお話させていただきます。
何の目標かを明確にする
目標と言っても将来にわたる大きな目標、目先の小さな目標などさまざまです。
目標を立てる際にまず意識していただきたいのが「何の目標か」ということです。
例えば、大きな分類でみても以下のような目標に分けられます。
・会社全体の目標
・事業の目標
・施策別の目標
施策別の場合でも、さらに細分化することができます。
マーケティング現場でよくあるのは以下のような目標数値ですね。
(例)
- サイト改善によりCVRを10%改善
- 広告の露出を増やしてクリック数を20%UP
- お客さまへの電話対応品質向上によりクレームを30%減らす
このように具体的な目標に落とし込むことでやるべきことが明確になってきますので、何の目標を決めるのかをしっかりと考えましょう。
目標設定の方法
実際に目標を考える際に、大抵の場合、以下の2つの方法で考える事が多いと思います。
①大きな目標からブレイクダウンして小さな目標へと落とし込む
会社全体の目標や事業目標が既にある場合、その目標に沿って施策別の目標を立てるようにします。以下の例のように、より上位の目標をブレイクダウンして小さな目標へと落とし込んでいく方法です。
・会社目標:今年度の売上を20%増やす
・事業目標:新商品販売により売上を20%増やす
・施策目標:新商品の広告宣伝を行いLPへのアクセス数を20%増やす
②現状から目指すべき方向性を考える
現状から目指すべき方向を考えるという方法もあります。例えば、昨年の新規顧客数が1000人だった場合、今年は20%増の1200人にしようと決めるようなケースです。
この2つの方法のどちらが望ましいでしょうか?
結論から言えば、①の目標設定の方法が望ましいです。
それは、会社や事業全体の目標と同じ方向性で連動しているため成果に繋がりやすく、さらに経営層や上司の了承が得られやすくなるからです。
後者の場合、その目標が達成できても単なる自己満足で終わってしまう懸念もあります。
部門や施策担当者に数値目標がない場合でも、会社全体の何らかの指標はあるはずなのでできる限り大きな目標から小さくしていく方法を選ぶようにしましょう。
目標を立てるときのポイント
皆さんは「SMARTの法則」というのをご存知でしょうか?
1981年に、ジョージ・T・ドラン博士が提唱した目標を具体的するフレームワークのことで、次にあげる5つの項目の頭文字をとったものです。
これから目標を立てる場合や、既に設定した目標を見直す際に、SMARTの法則に沿って検証してみるとよいでしょう。
1.Specific(明確性)
「Specific」とは、「明確性」や「具体性」を指します。目標というのはチームや組織全員で取り組んで達成する必要がありますので、全員にわかりやすく納得感が得られやすい目標にすることが不可欠となります。
2.Measurable(計量性)
「Measurable」とは、「計量性」や「測定可能性」を指します。目標が数値化されており、進捗状況や達成度合いが常に計測できる状態であることが必要になります。
3.Achievable(達成可能性)
「Achievable」とは、「達成可能性」を指します。目標設定が難しすぎると、メンバーのモチベーションが下がってしまい達成が困難になります。反対に簡単すぎる目標設定も望ましくありません。
4.Relevant(関連性)
「Relevant」とは、「関連性」のことです。どんな仕事も会社全体の一部の役割を担うことになりますので設定する目標が会社目標や事業方針に沿っていることはとても重要です。
5.Time-bound(期限)
「Time-bound」とは、期限のことです。目標をいつまでに達成するのかを決めないと、ズルズルと先延ばししてしまうことになりますので明確に期日を決めることが必要です。
目標から具体的な施策に落とし込む手順
目標は立てて終わりでは意味がな、く実行してはじめて前に進むことができます。
しかし「売上20%増やす」という目標を立てたとしても、一体何をすればいいのかわかりません。
ここでは目標達成のために最も効果的な手段を絞り込み、さらに具体的な数値目標に落とし込む方法をお伝えしていきます。
決まった手順があるわけではありませんが、私の場合、下記に紹介する手順で考える事が多いです。
今回は参考事例も交えつつご紹介します。
ここで登場するKGI、CSF、KPIはビジネスにおいてよく使われるものとなります。
本題とはそれてしまうため詳しい解説はしませんが覚えておくことをおすすめします。
(参考)KGI、CSF、KPIとは?
KGI(重要目標達成指標)
KGIとは、「Key Goal Indicator」の頭文字を取ったもので、ビジネスにおいて組織や企業が目指すべき最終的な目標指標です。
CSF(重要成功要因)
CSFとは、「Critical Success Factor」の頭文字を取ったもので、目標(KGI)を達成するために最も重要となる要因や施策のことです。
KPI(重要業績評価指標)
KPIとは、「Key Performance Indicator」の頭文字を取ったもので、KGIを達成するためのプロセスであり、CSFを具体的な指標に落とし込んだものです。
①最終目標(KGI)を考える
まず最初に最終目標を具体的に決めます。先程ご紹介したように、会社や事業方針に沿って目標を決めるようにします。
ここではECサイトの売上を最終目標とします。
(例) KGI:ECサイトの売上1億円を目指す
②現状とのギャップを把握する
まず売上目標が1億円と決まりました。
次に行うのが現状と目標とのギャップの把握です。例えば現状の売上が8,000万円だとすれば、目標となる1億円とのギャップは2,000万円です。
つまり、今よりも2,000万円をどうやって増やすのかが具体的な数値目標となります。
③目標達成のための最良の方法(CSF)を考える
次は、売上をどうやって増やすべきかを考えます。
ECサイトの場合、大きく分けると下記の3つに分類できます。
ここでやってしまいがちなのが、この3つを同時に取り組もうとしがちですが、限りあるリソースを最大限活用するために、もっとも効果的だと思われる方法に絞り込むようにします。
ここでの絞り込みは企業の状況やリソース状況によって異なります。
例えば予算がこれ以上無ければ、新たに広告で集客を増やすのは現実的ではありませんし、無闇に客単価を高くしても、市場の相場感から乖離してしまうとむしろ離脱される危険性もあります。
「どれかひとつに絞るなんて無理だ」という意見はよく耳にします。
それ以外は一切手を付けないというわけではなく、あくまで重点的に数値改善に取り組む指標をどれにすべきかを絞り込むということです。
その他の指標もきちんと定点観測しておくことは言うまでもありませんのでご注意ください。
ここでは「成約率の改善」に絞り込むようにしましょう。
(例) CSF:成約率の改善
④さらに小さな施策に細分化する
「成約率の改善」が優先施策と決まりましたが、これだけではまだまだ具体的な施策レベルに落とし込めていません。
それぞれの改善方針をさらに具体的な施策レベルにまで落とし込んでみましょう。
例えば成約率の改善の場合でも、「カートに入れるまで」と「カートに入れた後」に分けることができます。
この分け方は決まったルールはありませんが、実行できる施策単位にまで細分化できることが理想的です。
仮にここでは「カゴ落ち率」を最優先に取り組むようにします。
⑤施策を具体的な指標(KPI)に落とし込む
④で絞り込んだ施策に対し、具体的な数値目標を決めていきます。
これがいわゆる「KPI」となります。KPIを決めるうえで重要になるのが、KGIとの関連性です。
KPIが達成できればKGIも達成できるというのが理想です。今回はカゴ落ち率の改善を推し進めていくことにします。
ここでのポイントは、カゴ落ち率の改善で売上2,000万円を増やすためにはどのくらいの数字に改善する必要があるかということです。
仮に現在のかご落ち率が80%だった場合、64%に改善すれば計算上は売上目標が達成できることになります。
(例) KPI:カゴ落ち率を64%にする(80%→64%)
「売上を2,000万円増やす」といった漠然として本当に達成できるのか懐疑的だった数値目標が、「カゴ落ち率を64%に改善する」に絞り込むことで、やるべきことが明確になりなんとなく達成できそうな気がしてきませんか?
今回はわかりやすく理解いただけるように極力シンプルにしていますが、大きな考え方としては同じです。
このように最終目標を達成するために、何をどのくらい改善すればいいのかを具体的に示すことで、チームメンバーも自分がやるべきことが明確になります。
同時に、数値化することで現状からの改善度合いも常時チェックできるようになりますので検証や評価についても公平でわかりやすくなります。
マーケティング支援会社による目標設定の提案
「クライアントに具体的な数値目標がなく、どうしたらいいか困っている」というケースもよく耳にします。広告代理店など集客支援する場合は、数値目標がないとどうすればいいのかわからなくなりますよね。
ここでは、マーケティング支援会社がクライアントに対して目標設定の提案をする際に気をつけるべきことをお伝えします。
私自身、事業会社での実務経験が20年近くあり、マーケティング支援会社から何度も提案を受けた経験がありますのでそれを踏まえて解説させていただきますね。
事業全体の目標と施策目標との関連性
まず一番重要なのが事業全体目標との連動性です。
広告代理店の場合は、広告によって集客を行うことができるため、ついKPIを集客数においてしまいがちです。
でも、単に数だけを集めても、それが売上(事業目標)につながらなければ意味がありません。せっかく達成しても評価されないばかりか、無駄なコストを使ったというクレームになる可能性もあります。
例えば、事業方針として「他社と比べて高品質・高単価な商品を販売」するのであれば、当然広告もそれに沿って集客をすべきです。
この場合は「世帯年収1,000万円以上のユーザー」というふうに、事業方針に沿ったターゲットにアプローチをすべきです。間違えても10代の学生を大量に集めるようなことは行ってはいけません。
いつまでに、何を、どうする?
数値目標を決めるときは、対象範囲、期日、具体的な数値が不可欠だとお話ししました。ここでも必ずこれらを明確にするようにしましょう。
(例)2022年度中に、年収1,000万円以上のターゲットユーザーを、◯◯◯人集める
ここで大事なのが、何故この数字になったのかという根拠と考え方です。SMARTの法則を抑えつつ、論理だてて説明できるようにしておくことも重要になります。
自社でコントロールできる指標にする
当然ですが、提案する以上は達成を目指すことになりますので、自社がコントロールできる指標にしましょう。残念ながらマーケティング支援会社は事業全体を支援することはできませんので、他の要因については改善することができません。
ただし自社以外の変動要因も考慮しつつ目標数値を提案することで、実効性が高く効果的な目標設定ができるようになります。
季節性、キャンペーン内容、競合他社の動きなど、事業全体を意識してクライアントと同じ目線で設定を行うことが大切です。
クライアントとの合意形成
数値目標を提案しただけでなく、最終的にクライアントとの合意形成を得ることが必要です。そうでないと勝手に決めて勝手に運用しているというイメージを持たれてしまうと最悪です。
きちんとコミットメントを得ることで、その数値がお互いの共通の努力目標となります。
安心して数値目標に向かって運用することができるようになりますので、たとえ面倒でも合意形成を得るようにしておきましょう。
徹底した事業理解と顧客理解
少し目標の話とそれますが、事業会社が支援会社に求める役割は何も数字だけではありません。
事業会社のマーケ担当者は基本孤独なので相談相手がいません。なので同じ目線で相談できるパートナーは非常に重宝したくなります。
時には事業方針について意見を求めたり、一緒にアイデアを考えるなど、事業におけるパートナーになることができると大変頼もしい存在となります。
依頼する側と仕事を受ける側という関係性ではなく、同じ目標を目指す対等なパートナーとして取り組めるようになるといろんなメリットが生まれてきます。
・提案内容が通りやすい
・日々のコミュニケーションが増える(相談されやすい)
・短期の数値を背負うのではなく、中長期の事業成長をサポートする役割になる
そのためには事業者と同じ目線で会話ができるように事業理解をしたり、クライアントのお客さまのことを知ることがとても重要です。
もしクライアントですら知らない情報を知っていれば、支援会社の株がグッと高まることは間違いありません。
まとめ
いかがでしたでしょうか?
数値目標を決めることは実は事業全体を考えないと効果的な目標とはなりません。
- まずは何の目標なのかを明確にする
- 目標を立てるときは「大きな目標から小さな目標」へと落とし込む
- SMARTの法則を使うと効果的
- KGI、CSF、KPIを理解する
- 関係者との合意形成はめちゃくちゃ大事
今回ご紹介させていただいた方法は私の独自の考えも含んでおりますが、実際の現場で活かす際に参考にしていただけると大変うれしいです。